「リコーダーセンサー」近況報告

リコーダー - bloveyuの日記

 ある女の子の鼻を「リコーダー」と

読んでいます。

2Bが高校時代に出会った

女の子の鼻です

 

とてもきれいな鼻なのです

 

かなり希少な形らしく、ネットを探しても、街に出て探してみて、もなかなか

見つかりません

 

 

 

呼び方に

こだわっているのです。

 

べつに、あの女の子の鼻が リコーダーそっくり

だから

そう呼んでいる  というわけでは

ありません。

 

 その他大勢の平凡な形の鼻と区別する

ために、あえて「リコーダー」と

 

読んでいるだけなのです。

 

「花」とか「華」とか「はな」とかいう呼び方だと、なんとなく彼女の鼻とイメージから

離れてしまうので

 

そう呼んでいるのです

 

リコーダーに似た鼻を見つけると

「リコーダーセンサー」が反応します

(以上、『リコーダー』振り返り)

 

【リコーダーセンサー】

1件:浅野里香

 

ブラタモリ見てたらリコーダーセンサーが

反応しました。

 

鼻 どころか顔全体が似ています

 

タモリの横に立つ姿が よく

見られますが

まるであの女の子を見ている

ようなのです

 

 

高校時代、隣のクラスに その

子はいた

 

誰もいない時間を狙って隣のクラスに

侵入して

掲示板に貼られているモノのなかから

その子がいる写真を

探す

 

 

見つけた!

 

 

体育祭が終わって全員で記念撮影を

した時の写真

隅っこにあの子の

笑顔がある

 

笑っている。頬が押し上げられて、下唇が程よく横に伸びて、白く光る鼻の先が

鼻の穴を隠して小さな風船みたいに

膨らんでいる

 

それに似た顔がブラタモリに出てきたのです

 

 

かわいいなぁ

 

 

 

 

ということで、今回は

リコーダーセンサーを1件だけ紹介させて

いただきました

 

ではまた

夢の記憶喪失論

 

 夢の僕は記憶喪失になったことがある.つい最近の話である.記憶喪失になってはじめて,僕は記憶喪失を恐れることになった.

 夢を再現しようとして,記憶力と想像力をフルに働かせて,僕はある場所を描いた.

 

 一面コンクリートの世界で,僕のすぐ隣は崖になっていて,崖の横にはコンクリートのブロックが,飛び移れる程度に隣接している.手すりを乗り越えれば,そこに行ける. その崖の向こう側にも何かがある.向こう岸はコンクリートではない,芝と砂に覆われた,どこにでもありそうな公園である.ツタの被った東屋,そして緑色の空気が公園を包み込む.

 

 そんな景色を再現していたら,そこそこの出来になった.完全な再現ではないけれど,特徴はつかめている.雰囲気,質感,色,においまで思い出せそうな出来だった.とりあえず60パーセントの出来というところで,僕は妥協した.「妥協した」というより,やはり夢を完全に再現することはほぼほぼできないと言ったほうがいい.絵を描く技術が不足していたというのもあるが,完全に描けないのにはもっと別の理由がある.

 

 夢の僕の記憶の中には,たしかに夢の景色が100パーセントの再現に成功している.頭の中ではイメージできるのだ.夢を見たとき,なにを感じていたのか,どうしたかったのか,など,そういう感覚が,現実に表現することができなくても、なぜだか分かる.

 

 そういう感覚というものを,なんとか形にしようとした結果が60パーセントほどの出来だった,ということなのだ.

 出来上がった絵をしばらく見つめ,僕はとりあえずの出来に満足することにした.

 

f:id:bloveyu:20201011221539p:plain

(↑夢で見たものの再現)

 

 次の日,僕はあることに気が付いた.今までできたことができなくなったのだ.頭の中では100パーセントの再現を誇っていた,夢の僕による夢の再現が,70パーセントほどにしかできなくなった.夢で見た風景を思い出そうと目を閉じて必死に集中しても,昨日描いた絵が出てくる.昨日描いた線,色,雰囲気が,夢の僕の意識のすべてを覆いつくし,かつて感じることのできたあの感覚が,消えてしまったようである.たしかにあったあの感覚は,私が現実に作り出した絵の特徴が本物のあの景色すべてに上書きされて,もう二度と思い出すことのできないものとなってしまった.もともとどんな景色だったのか,そこではどんなことを考えていたのか,何のために絵を描こうと思っていたのか,何のための夢だったのか,夢の僕には見当もつかなくなってしまった.

 夢の再現は,夢の僕(僕)の夢だった.

けれど,それは夢という「そういう感覚」を消してしまいかねない,恐ろしい作業だったのだ.

 

 夢を思い浮かべながら描く作業は捗った.いつも風景画やアニメキャラのイラストを描けずにむなしさを感じていた僕は,夢の再現にその救いを見出していた.

 僕は,絵は,カメラにも文学にも再現できない「そういう感覚」を見事に再現できる優れたものなのだと確信していたが,それは大きな危険を伴う実践だったのだ.100パーセント再現できるならそれに越したことはないのだが,再現に失敗して中途半端な出来栄えになってしまえば,「そういう感覚」は偽物のそれにすべて置き換えられ,上書き保存され,二度と再現できなくなる.さらに,二度とそれを感じることすらできなくなる.

 僕の夢の記憶はまがい物に上書きされ,上書きされた記憶は新鮮味のない「現実」と化す.

 

 僕は現実に記憶喪失になったことがない.だから,記憶喪失がどんなものなのか,なったらどんな気持ちになるのか,何を求めたいのか,全く見当がつかない.人とのつきあいのいざこざや,うまくいかないことのあれやこれやを,記憶喪失になることですべて忘れることができるのだろうと,かき消すことができるのだろうと,僕は記憶喪失にある種の期待の幻想を抱いていたのだ.

 つらい記憶やコンプレックスを消すのには,この記憶喪失は役立ちそうである.つらい感じは人それぞれ異なるだろう.「そういう感覚」になぞらえて言うなら「そういう嫌な感覚」は,記憶喪失の手続きを踏むことで,頭の中での再現を止めることが可能になる.夢で見たあの美しいような懐かしいような記憶が消えたのは,それを現実世界で目に見える形に再現したからであり,「そういう感覚」は再現を通じて消えることになる.つまり,「そういう嫌な感覚」も同様の手順を踏み,つまり,絵なり文章なり,そういうものに書き起こすことによって類似の嫌な記憶に上書きされ,元の記憶は消えるはずである.「たしかに嫌ななことがあった」という気づきだけは残るが,その内容だけがすっぽり消えることだろう.

 逆に,記憶喪失は愉快な記憶を消してしまう危険がある.家族はもちろん,社会で出会った大切な人とのかかわりの記憶が消える.感じることのできていた「人間の温かみ」みたいなものは,きっとどこかへいってしまう.

 

 また、再現が10パーセントとか,あまり再現度合いは優れていないけれども,特徴だけはかろうじてとらえているような再現は,そこまで元の夢の記憶を消す危険性は高くない.再現度の低い夢の再現が記憶を消さなかったことが実際あったので,こういうことが言えるのだ(ここではその説明を端折るが).

 夢の内容が,イメージが曖昧であり,かつ,再現の度合いが中途半端に高ければ高いほど,再現の危険性は高くなるとみている. 

 

総括

「嫌な記憶を消したいから記憶喪失になりたい」という願望は「勉強がつらいから大学を辞めたい」というのと同様に安直で危険な思考だ.ただ,嫌な記憶を消すのに寄与するあるひとつの手段としては,嫌な記憶を目に見える形に再現するというものが挙げられるだろう.嫌な記憶は類似の記憶に上書きし,元の記憶を思い出すときの障壁にすることが,嫌な記憶を消すひとつのうまいやり方なのだろうと,僕は考えている.ただ,嫌な記憶がはっきりとしたものであればあるほど,それは難しくなる.曖昧な,正体のわからない不安を消すには最適な方法ではないだろうか.

頭で考える世界,イメージの世界というものについて,それ自体を完全に見える化する作業というのは,すればするほど,それらが現実の平凡な事物に還元されてしまう,一見創造的なようで,実はむなしく模倣的な作業に過ぎないのだろう.

また, 夢の再現を通じて夢の記憶が消えてしまうのは《夢の内容やイメージがあいまいであり,かつ中途半端に精度の高い再現をしてしまったとき》に,今のところは限られるだろう.

 

追記①

また,夢の中で同じ場所に行くことができれば「あの感覚」は取り戻せるかもしれない.夢で見た「あの感覚」を取り戻すために,夢の世界を冒険するという物語が描けそうな気がする.

追記②

再現が100%またはそれに限りなく近い度合いであれば,上の文章で述べたことは問題にならない.だから,絵に夢を再現するなら,再現できるほどの腕前,現実の風景画をうまく描くことができるとかいうスキルは必要だろう.文章に再現するなら,言葉をたくさん知り,読み手のイメージをうまく操れる細工を持っていればよいと言うことになる.

 ただ注意したいことは,そうした絵画や文章をつくりあげるとき使う理論と夢の世界のイメージがうまく当てはまるかということである.4次元のグラフを人間が理解することができないのと同様に,夢の世界の様相も,現実ではとらえられないものかもしれない.実際どうなのかはわからないが.

追記③

うすぼんやりとしたものは,うすぼんやりとしたままにとどめておく方がよいと言える.消えてしまいそうなイメージというものを,それを大切にしたいと思うのなら,ありふれたもので置き換えてしまうことだけは避けるべきだろう.

追記④

 風景を見て,少々,感じることがある.何を感じるのか,どう感じるのか,なぜ感じるのか,よくわからない.だから,しっかりとした形として,記憶に残したくなるものである.だから,写真を撮ったり,自分は今何を感じているのかの整理をすることだろう.だがそういうときは,すぐに写真を撮るのをやめて,すぐにあれこれ考えて感覚を掴めるものにするのではなく,ただ微々と湧いてくる感覚を無批判に無思考に受け入れるべきだろう.考えるのは後でもよい.

追記⑤

ある作品と出会い,受け取るイメージというものは,実はそうではないものの再現といえるのではないか.ある作品と出会い,感銘を受けるあの心地よい経験は,作者のイメージの「偽物」であり(そういう意味での「フィクション」という名前があるのだろうか)本物を知ることはほとんど無理な試みなのだろう.

Pixiv詠

(要修正)

 

しめやかに 朝影にほふ 若立ちの

咲き乱るるを 見すは朝なり

 

 

 

Pixivに投稿されたR18のショタラストを想って書いた歌です。なので、「Pixiv詠」という題をつけたのです

 

 以下では、この歌の詳しい説明をしていきたいと思います。是非とも、次のPixivのイラストを見ながら、読んでいただきたいと思います。

イラスト見るためにはログインする必要がありますね。

[R-18] 無題 | ずたぼろ. #pixiv https://www.pixiv.net/artworks/84693289

 

品詞分解

しめやかなり(形動ナリ・連用)

朝影(名詞)

にほふ(ハ行四段・連体)

若立ち(名詞)

の(助詞・主格)

咲き乱る(ラ行下二段・終止)

を(格助詞〔動作の対象〕)

見す(サ行下二段・終止)

は(系助詞〔主題〕)

朝(名詞)

なり(助動詞「断定」終止形

しめやかに 朝影にほふ 若立ちの

ひっそりと静かに(部屋に)差し込む朝の日の光や

光に照らされた若葉(筋肉質の少年の身体がうつす影)が

生き生きとした美しさを放っている

若葉の(少年の)いい匂いがしそうだ

   朝影=朝日の光・光が作り出す影

 しめやかに朝の日の光を受けて輝く若葉のように、窓から漏れる日の光を受ける少年の裸体が美しく輝く

 

pixivのイラストを見ていただきたい

朝目覚めたばかりの裸の少年が描かれている

朝がやってきて、静かです

 

窓は、朝の日の光を受けて白く輝いている

夜の闇と、輝く星の描かれたカーテンが

日の強い光を受け

明かりを遮断するのに失敗している

 

日の光は筋を描いて優しく静かに降り注ぎ

数粒の埃は朝の静寂を漂わせる

 

切り株に生えたばかりの若葉が

朝にに照らされている

 

舞台にスポットライトが照らされるように

ベッドの上の裸の少年は朝日に照らされる

光は影を追いやり

光は影に照らされ

 

舞台の上の少年の裸体は

否が応でも

観客の視線すべてを奪う

頬に流れる一筋の汗まで

 

 

若立ちの
咲き乱るるを 見すは朝なり

根株から生える新芽が(ベッドの上の少年が)

咲き乱れる(勃起し射精する)のを見せるのは朝なのだ

 「若立ち」と「朝勃ち」を掛けている

 ここでは朝についての持論とともに朝と朝立ちのエロをしみじみと語っています。

 

若立ちは咲かない

わかばは花を咲かせない

生えたばかりの芽が

花を咲かせることなどできない

それなりの時間が必要だ

じっくりとそのときを待つのだ

 

それなのに

待ちきれずに花を咲かせる

咲かせるだけでは飽き足らず

咲き乱れるのであり

咲きすさぶ

盛んに ほしいままに

咲かせるのである

 

切り株の上で

朝日に照らされた若葉は

若葉のくせに

美しい花を

気の向くまま

盛んに

咲かせてやがる

 

 

朝のベッドの上で

勢いよく飛び出る少年の精子

朝立つ鳥のように

勢いがよい

 

尽きることなく、出し切ることはない

あくまで「溢れる」だけなのだ

精液に満たされた身体にもかかわらず

朝の日を浴びて

精子が止まることなく湧き続け

溢れて飛び出す

 

部屋は

小学校に入学したあの時のまま

親にプレゼントされた夜空の星のカーテン

雲の描かれた布団

どこまでも飛んで行けそうだ

 

精通した日は

そう遠くはない前の話だ

まだ中学生にもならない少年

白く匂う粘液の溜まった身体は

毎朝 朝に照らされるとき

溢れ出て溢れ出て

どうしようもない

 

朝というものは

そういうものなのだ

 

星空のカーテンは半分光に溶けて

夜が明ける

夜は終わり、朝がやってきた

夜明けというのは子供が大人の世界に入ろうとする

最も曖昧で恐ろしい時間なのだ

朝は1日の始まりであり

朝は人生の幕開けなのだ

 

そんな朝は少年の身体を大人の身体に無理に近づけ

日光をして少年に射精させる

 

結論

光と影の織りなすショタの肉体美

朝日に照らされて溢れ出る精子を止められない身体

窓から漏れた朝の光を受ける朝立ちのショタチンポはエロい

ということです。

 

リコーダー

 《ある女性の鼻を探しています》

 あの子の鼻をあまり「鼻」と呼びたくない。「鼻」は「くさくて生暖かい人肌でできた雪室」という感じがするからだ。「花」を使ったほうがまだ、ましだ。だけど、「花」も使いたくない。小さくて柔らかくて、少々の風にも吹き飛ばされてしまうような気がするからだ。あの子の鼻は『確実にそこにある』『形がある』なんだ。

 まぁ、あの子の鼻の呼び名は「リコーダー」ってことにしておこう

 「鼻」とググってみると、黄色く図太い生姜のようなものがずらりと画面を占める。リコーダーは、どこにもない。

 私は高校を卒業し、リコーダーを見る機会を完全に失った。血眼になってネットを見つめ、リコーダーに似た鼻がないかと、鼻探しに明け暮れた。

 目当てのものは見つからなかった。

 

 リコーダーは、花火のように、くっきり、はっきりと、私の前に現れる。現れたら、どんなときも「これはリコーダーだ」という注意が、私の意識の最前列にくる。つまり、人でぎっしり詰まった電車の中でも、無数の人が交差する横断歩道でも、学生でごった返した食堂でも、私は、その他大勢の鼻とあの子の鼻、つまりリコーダーを、簡単に見分けることができるのだ。

 映画で俳優が横を向いている時、アニメでキャラクターが横を向いている時、僕は無意識のうちに、その横顔にリコーダーが付いていないかを確かめる。「リコーダーセンサー」とでも言っておこうか。

 センサーがリコーダーを感知することはほとんどない。

 

 

 「見つけた」と思うとき、私の鼓動は激しくなる。高速を走る車から飛び降りて、地に足がついて2、3歩走って、その次の一歩が追いつかずに、つまづいて頭から倒れるように。そのまま転がっていってしまうようになるのだ。

 心臓が動き出す。心臓が手になって、そのまま皮膚を突き破って、リコーダー目掛けて飛んでいきそうな気がする。

 

 私のリコーダーセンサーが反応を示したのは2回だけ。1度目はバイト先のコンビニ。

 オバさんの横顔が目に入った。突如リコーダーが現れた。オバさんだけど、鼻はリコーダーにかなり似ている。「もしやあの子のお母さん?」と思うほどである。

 心を落ち着かせ、視線を合わせないように気をつけて、オバさんのリコーダーをちらと見つめる。

 おばさんのリコーダーに吸い込まれてしまいそうだった。

 オバさんとリコーダーが私に近づいてくる。

私は黙々と精算する。

 レジ袋を渡すときだけ、リコーダーをじっくり見つめることができた。

 何も会話することなく、オバさんとリコーダーは店を出てしまった。車の車種とナンバーだけでも覚えておこうと思ったが、オバさんは、すぐにいなくなってしまった。それ以来、そのオバさんとリコーダーは、二度と現れなかった。それから、私は前にも増して、リコーダーを渇望するようになった。

 

 

 私はリコーダーを想って詩も作った。文芸の即売会にも出した。ここで、その一部を紹介する。

 

 

  あふれる 水飴 リコーダー

  今すぐ咥えて こぼさないように

  

  ふきだす 水飴 リコーダー

  さぁ吸い取って 詰まらないように

  

  ごちです 水飴 リコーダー

  ボクらの蜘蛛の巣 切れないように

 

                『リコーダー』

 

 1人だけ立ち読みしてくれた人がいたんだけど、マスクをつけていたので、表情が隠れて、反応がよくわからなかった(マスクつけていた女の子の鼻は、一体どんな形してるんだろうと、その時は思っていた)。

 

 冬休み、バイト先の塾で、僕は大変な目に合った。

 

 あの子に似た子を見つけた。

 女子中学生だ。

 彼女の鼻はリコーダーにあまりに似すぎていて、度を超していた。

 

 

━━━ 型をとらねば。

 

 私は粘土を買ってきた。

 

━━━ 型をとるから、ちょっといいかな

 

 彼女を隣の、誰もいない教室に移動させて、奥の椅子に座らせた。

 

彼女は太腿の上で手を握り擦り合わせながら

 

 ━━なにをするんですか

 

他の教室の子に聞こえないくらい小さな声でそう言い、私の顔を見上げた

 

━━━君の顔の型をとりたい。大学の授業の宿題なんだ。顔の型をとってこいって言われたから。いいよね

 

 ━━えっ、なんで私なんですか?

 

━━━いや適当に。君が1番、成績が良いからだよ。さぁ、息を吸って、20秒くらい我慢ね

 

 彼女は何も言わず目をつむり、首を伸ばし、身体を膨らませる。

 

 粘土を手にとり、彼女の顔にくっつけた

リコーダーは粘土に、静かに、静かに、沈んでいく。私の手も、彼女の顔に沈んでいく

 掌で、彼女の顔が、呼吸に合わせてリズミカルに震えるのを感じる。リコーダーの横、上、下、隙間ができないように、きっちりと、粘度を彼女の肌のすみからすみに密着させる。

 

 ━━んっ

 

 彼女は幾度か唸った。息が続かないサインだろうか。

 私は仕方なく粘度を顔から剥がすことにした。

 型の形が変わらないように、粘度を水平に、ゆっぬり、ゆっくり、離していく

 

 ━━ぷは

 

 粘土と彼女の間に、白い糸が引いた

 私はしばらくそれを見つめ、近づいて

 それを口の中に入れた。

 そして、そのままリコーダーの口を、すっぽり私の口で覆い被せて、中身を吸い出した。

 

 繋がる私たちを見つけて、中学生たちは騒ぎ出した。すぐさま塾長が駆けつけ、ヒルのようにひっついた私の口を彼女からひき離した。

 すぐに駆けつけた彼女の両親から、今まで聞いたことがないような叱責を受けた。彼女は相変わらず下を向き続けている。頬を赤らめ、リコーダーを垂れている。先っちょから透明の液が滴るのを見て、僕は手を伸ばした。

 伸ばした手は、見事にはたき落とされた

忘れられた言葉

 目が覚めて、言葉を繰り返す。

 

 「サラチナ...サラチナ...サラチナ...」

 

 目の焦点が合わない、寝ぼけたまま、スマホを開き、メモ帳アプリを開き、ふらふらとした指さばきで、何度も打ち間違えながら

 

かひ(取り消し)さや(取り消し)そらに(取り消し)さらにね(取り消し)

はらにな(取り消し)

さらちは(取り消し)

さらちな(カタカナを探す)(改行)

 

 「サラチナ」

 

と打ち込む。

 

現実世界に「サラチナ」なんて言葉は存在しない。そういう名前の競走馬がいるんだけれど、僕が夢で知った「サラチナ」は、もっと別の、何かエッチな行為を指す言葉なのだ。エッチな行為を指す「サラチナ」という言葉は、この世界に存在しない。

 

 現実で人間が口にする言葉ではない。検索してもヒットしない言葉だ。夢で生まれた言葉「サラチナ」

 

「サラチナ」に続いて、その言葉の意味も書き込む。この世に存在しない言葉の意味など分かるはずもないと思われるが、夢の中で、その言葉がどのような文脈で、どのような意味で用いられたかを、僕はなぜだか知っている。だから、それを思い出して、忘れないうちに急いで打ち込む。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 数分後、私は「サラチナ」を忘れている。

 なにか夢で出会った言葉の存在だけは覚えているのだけれど、具体的にどんな言葉だったかを全く思い出せない。

さっきまで覚えていた「サラチナ」という言葉の響きが、声に出す時の舌の動きが、イメージが、記憶のどこを探しても見当たらず、「サラチナ」は僕の口から出るどころか脳内にすら現れなかった。

 きれいさっぱりに「サラチナ」は忘れられてしまった。

 私は意識を集中させて、脳内のあらゆるイメージを探し歩く。「サラチナ」を探す。なんとかして、見つけ出そうとする。

 

 結局見つけられずに、スマホを開き、メモ帳を開き「サラチナ」を見つける。

 忘れられた言葉を、思い出せたけれど、見つけられたけれど、驚きも感動もない。なにも嬉しくない。おそらく5分後にまた「サラチナ」は忘れられる

 

 

 

 

※ちなみに、夢から生まれた「サラチナ」という言葉は、なにかエッチなことを指す言葉。【「サラチナ」をしても妊娠しないから、今後「サラチナ」を辞める気はない】とかいう言葉の使われ方がある。

未来を撮る

 星新一の本を読んでいたら、僕も、こういう短い面白い話を書きたいなと思って、試しにひとつ書いてみることにしました

 

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 僕はカメラ大好き大学生。

 不忍池の骨董市で古いカメラを見つけた。

 

 「それは『未来』が撮れる写真だよ」

 近くの椅子に座るくさそうなジジイがそう言った。

 「未来を?」

 「今なら1000円で譲ってやってもいいぞ」

 

 フィルムカメラなのでいちいち現像するのも面倒だが、せっかくなので買ってみることにした。

 

 カシャ。目の前に見える不忍池を撮った。

 何年先の写真が撮れるのか、聞くのを忘れてしまったが、まぁ「未来」といったら100年後だろう。100年後の不忍池は埋め立てられているかもしれない。

 

 カシャ。上野公園のスタバを撮った。100年後には「スタバ」ではなく全く別の名前の店舗になっているんじゃなかろうか。

 

 カシャ。自分を撮ってみた。上野公園を散歩中の可愛い女子大生に撮ってもらった。

 彼女の姿も撮ってあげた。

 「このカメラは未来を写せるんだ」と説明しているうちに仲良くなった。現像して写真が出来上がったら、会って写真を見せてやるという約束もしてしまった。

 

 数日後、現像した写真を受け取りにカメラ屋に行った。不忍池のベンチで、封を開け中身を見ると、どの写真も真っ黒で何も見えやしない。

 「あのくさそうなジジイに騙されたんだな」

 カメラを買った金も、現像代も、女子大生と会う約束もパーだ。

 腹が立って、僕はそのカメラを池に放り投げた。

 

 数週間か経ったある日、家で昼寝していると、何の前触れもなく無性に外に出て写真を撮りたくなった。歩き続けて、気づくと僕は不忍池にいて、服も脱がずに池に飛び込んだ。

 あり得ないほど深く潜り、箱のようなものを手に取り、機械に引っ張られているように勢いよく水面まで上がった。泥まみれの箱を顔に近づけ、なにかボタンのようなものを押したら

 「カシャ」

という音が鳴った。泥を払ってみると、それは僕が池に投げ捨てたカメラだった。

 あの日骨董市にいたジジイにこのカメラについて尋ねてみると、こう言った。

「今の自分が未来の自分に同じ場所で撮影するように命令して、取れた写真を今に転送するという仕組みなんだ、このカメラは。池なんかに捨ててしまうだなんてバカなことをするんだね、君は」

 

おしまい

 

ーーーーーー

 

自分なりに評価すると、なんか引っかかる、あまり細工が優れていない話だなぁと思いました

ちんこう

水曜の4限は、西野先生の授業だ。

 

 西野先生は、マクロ経済専門の女性大学教師だ。今日は経済統計の授業をしてくれる。

 この授業は男子学生に人気で、男女比率が7:3の少々男臭い授業であった。

 先生はいつも授業開始のチャイム10分後、ヒールの音を廊下に響かせ、ベージュのトレンチコートを手に、黒革のビジネスバッグを肘にぶら下げながら早足で教室に入ってくる。容姿は大人の女性だが、授業に遅れいそいそと教室に入る姿はどこか子供っぽい。

 教卓に鞄を置き、椅子に腰かけ脚を組む。スカートの裾は膝の高さで途切れ、組み込まれた太ももがこちらから見える。胸元は、谷間の影がギリギリ見えない程度に露出していた。

 

 50歳近いオバサンといえども、顔は整っており美人、「熟女系」だ。隣に座っている男子大学生が先生の下半身をチラチラとみているのを私は知っていた。

 私も、重なり合う太ももを盗み見た。脚の上にのせられたもう一方の太もも肉は、重力の働くまま下に垂れ下がり、椅子から大福もちのような輪郭のぼやけた緩やかなカーブを描いていた。

 先生は教室全体を看守のように見回しながら授業をする。私のほうに視線が向けられることも当然あったので、太ももから先生の顔へと視線を移す、そうした忙しない目の運動を強いられていた。

 

 少しだけ鼻声で、恋人の耳元へさやくように、先生はマイクに話しかける。スピーカーから届く先生の声は妙に色気があった。

「なんかえっちだ...。」

 

―「最近のどが痛いんだよね」と言い、先生は授業中にもかかわらず飴玉をなめだした。

 スピーカーから、飴を舐める音が聞こえる。唾液に濡れた飴玉を舌と歯茎で包み擦る音が聞こえる。

 

―「コロッッ..コ.....ンチュパッチ...それで、この統計調査はァ」

 

 リップノイズが教室中に響き渡る。顔を見合わせる男子学生たち、ひそひそと笑いながらおしゃべりする女子大生たち。

 先生は講義を続ける。スピーカーから聞こえる、やらしい音に先生は気付いていないのだろうか。

 

―「チョチ……次は、ちんぎん統計ねコロッ..」

 

 (『ちんぎん』か・・・。なんかエロいな)

 おそらく、教室中の男子大学生は私と同じことを考えているはずだった。なにせ、男のアソコの名前と一文字違いだ。アソコの名を直接言わないからこそエロい、言葉のチラリズムか。

 

—「ヌチパッ……ち〇こ」

 とうとう西野先生は一線を越えてしまった。

 あまりの衝撃に一瞬、何が起こったのか本当に分からなくなってしまった。

 

 

「ち〇こ?」

「今、先生ち〇こって……?」

 教室中がざわめく。ほぼ50歳の熟女教師が、耳元で恋人にささやきかけるように、若干鼻声交じりの声で、20歳前後の若者たちの前で、男のアソコの名前を、今度は「直接」放ったわけだ、飴玉を口内に包み込む官能的な音を響かせながら。

 

西野先生、さすがにそれはやりすぎだ。

 

 

―「チュパチッ…ん、君、聞いてる?」

 茫然自失としていたら、西野先生に注意されてしまった。

 目を見開き、首をせわしなく縦に振り返事をし、慌てて目線をレジュメに合わせた。

 

『賃金構造基本統計調査』

 

レジュメには漢字10文字の、読むのも嫌になりそうな、長い統計の名前があった。

―「ちんぎん、こうぞう・・・・あ、そうか、「ち〇こ」というのは「賃金構造基本統計調査」の略か……」

 

『賃構(ちんこう)』 

誤解が解けた。

 

経済学ってなんかえっちだ...w